2011年3月16日水曜日

病と向き合う親父の横で 03

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親父が入院した。

今回の入院に際し、その目的と今後の治療方針の説明を主治医から家族に対して行うと申し出があったので、親父の見舞いも兼ねて病院へ赴く。今回の見舞いには、親父をよく知る僕の友人RIS、妹の友人で折しもうちに短期ステイ中だったイタリア人ダニエルの2人が同行してくれた。

旅行好きの親父のため、銘々旅行関連の書籍を手に入れ病室に向かう。僕は日本各地の温泉を巡ったライダーの手記を手土産にすることにした。
親父の入院している4人部屋は、昼にも関わらず全てのベッドカーテンが閉ざされており静まり返っていた。暗にリンパ腫治療の辛さを示しているのか、と内心焦りつつ親父のベッドのカーテンを少しめくると、時間を持て余しているかのような表情を浮かべた親父がベッドの縁に座っていた。

こちらを発見し笑顔を浮かべる親父。「おう、正式な病名わかったぞ。肥満型リンパ腫らしい」親父、それ違う。肥満じゃなく瀰漫(びまん)。ともかく、病室でうるさくするのも憚られたので休憩室へ向かうことに。

4人で歓談しているところに母が到着。申し訳ないがRISとダニーには休憩室で待っていてもらうことにし、家族だけで説明を受けに。

主治医のK氏はとても気さくな方だった。こちらからの質問や、不安に思っていること一つ一つに対して澱みなく、それでいて言葉一つ一つを慎重に選びながら回答してくれた。
この手の治療の場合、何にもまして医師〜患者(および患者の家族)との信頼関係が重要となってくるが、現段階では我々の間に「嘘」は無いな、と感じた。

医師から説明を受けた結果、以下のことが判った。

・親父の病期は1(最初期状態)である
・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の他に濾胞性リンパ腫(B−3型)も併発している
・いずれも現状では低悪性度である
・治療は化学療法を用いる
・今回の入院では各種抗がん剤の投与を段階的に行い、有効度および副作用等様子を見る
・酒はNG

最後の部分を聴いた時の親父の落胆ぶりったら無かった。いや、それくらい自重しとこうね。いずれにせよ現段階で、即座に命に関わってくるような要因は無いとのこと。それが判った瞬間、胸のつっかえが取れた気がした。

親父の状態次第では外来に切り替えても問題無いという話だったのだが、現段階では薬の副作用がどの程度出るものか判断がつかないため、しばらくは入院しておいてもらう方が良い気がする。

「副作用の出方も人によってまちまちなので、どんな些細な変化でも教えてほしい」と医師は言うのだが、良くも悪くも大らかな親父に、それが十全に行えるやら若干心配なところである。まあ、自分の体調の変化に敏感になり過ぎるのも良くないとは思うが、バランスが難しそうなところだ。

何はともあれ、ひとまずの心配事は無くなったと考えて良いのだと思う。もちろん油断はできないけど、ある種の緊張が氷解したように感じられた、そんな春の日の午後だった。

喫茶室でお茶してくるという両親を見送り、安堵の表情を浮かべる友達らと共に僕は帰路についた。


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