2011年3月7日月曜日

病と向き合う親父の横で

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「悪性リンパ腫が見つかった」

親父が僕にあっけらかんと言い放ったのは3月5日の午前中、とても良く晴れた空の下。折しも親父と2人きりでご先祖様の墓参りに来ている時だった。

何もこんなタイミングでカミングアウトせんでええやん!!と墓石をタオルで一心に磨きながら思ったりもしたが、それ以前の問題として親父の口から出た病名が僕を激しく混乱させた。悪性リンパ腫?要するにリンパの癌ですよね。病気に対する知識の乏しさが更に不安を掻き立てる。今思えば、母が出しなに「今日は2人で行っといで」と我々を見送ったのも、何か含みがあった上でのことだったんだろう。

「なったもんはしゃーない」と親父は飄々としているが、まあ確かにその通りで、現状を受け止めるしか今はできることがない。悪性リンパ腫の種類・悪性度(※1)は現在検査中のようで、そちらが判明した段階で緩解(※2)に向けた取り組みを行っていくのだと言う。

自覚症状がありありと出るような病気じゃないせいか、親父はまるで他人事のように話しをする。えらい普通に話すなー、と半ば呆れながら問いかけてみると「まあでもなってしもたからなー」と飽くまでいつも通りの調子。親父は親父で折り合いを付けてるんだな、と思うことにした。徒に不安がっても意味無いし、むしろ周りを不安がらせること自体親父の本意ではないだろうし。

まずは今目の前にあることをしっかり行って、病と向き合う親父と向き合っていけば良いのだろう。覚悟は徐々にしていけば良いのだ。

墓参りを終え腹を空かせた僕らはその足で、お昼時のラーメン屋の喧噪に溶け込んでいくことにしたのだった。麺柔らかめの味噌ラーメンが胃やら心やらにしみじみ染みた。

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※1:リンパ腫には「良性」の分類が無いため、必ず「悪性」という括りになるらしい。ちなみに悪性リンパ腫は大別すると、比較的悪性度が低い「ホジキンリンパ腫」と、悪性度が中〜高程度の「非ホジキンリンパ腫」の2種類に分けられるようだ。なお後者は日本における悪性リンパ腫の約80〜90%を占めるらしく、また、その分類も30種以上に及ぶという。

※2:リンパ腫は全身に発生するという性質上、治療しても癌細胞が完全に消滅したということが証明できないようだ。なので「完治」という言い方はせず、腫瘍が検出できなくなった時点で「緩解(かんかい)した」と表現するのが通例であるとのこと。つまり緩解したからといって安心できるわけじゃなく、再発の可能性は以後消えることがないという。


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